知る人ぞ知る本格派イベント!「越後にしかわ時代激まつり」インタビュー


西蒲区西川地区で開催される「越後にしかわ時代激まつり」。

参加者が昔の衣装を着て練り歩くこのイベントについて、実行委員会の会長を務めている笠井健一郎さんにお話を聞いてきました。


廣瀬
イベントが始まったきっかけを教えてください。
笠井さん
元々ここは曽根町・鎧郷村・升潟村という3つの地域が合併してできた、旧西川町というところでした。ところが田舎なものですから、なかなか町全体で融和が進まなかったんです。そのことに頭を悩ませていた当時の町長さんが、「何か策を考えて欲しい」と周りの人に持ちかけたらしいんですね。それで、今の相談役を務めてくださっている方ですけど、その方を中心にして実行委員会を組みながら考え出したのが「時代激まつり」です。それまでは、例えば1991年に1991mの海苔巻き寿司を作るとか、単発のイベントをやっていたようですけど、「長く続けられるイベントを考えて欲しい」という町長さんの要望もあって始まりました。
廣瀬
なるほど。1991mの海苔巻きも気になりますけど(笑)。西川地域に代官所(江戸時代の役所)があったことも関係しているそうですね?
笠井さん
そうですね。長岡藩の曽根組という組織の代官所(曽根代官所)が置かれていました。その歴史を踏まえて「代官献上米行列」というものを行っています。実際は長岡藩の下級武士のものなのでそんなことはしていなかったんですけど、それでは面白くないということで、大名行列を模した代官行列にしたようです。史実である部分と脚色した部分を組み合わせて出来上がったということですね。

廣瀬
行列にはどんな人たちが参加しているんですか?
笠井さん
今ではゲストを呼んで代官役などをお願いしていますけど、最初は町の助役さんが扮していたそうです。それが何年か前に、当時の桂三枝さんとご縁のある方が実行委員にいらっしゃって、桂三枝さんに代官役を3年くらい続けてやってもらったことがありました。それ以来、著名人をゲストにお呼びする形式になって今日に至っています。
廣瀬
当時を再現した衣装を着るというのは変わりないですか?
笠井さん
そうです。先人に聞いた話ですけど、国の補助金を受けてこのイベントが始まったそうです。全国で5か所あるうちの1か所として選ばれたもので、4,200万くらいの金額だったそうですよ。今考えたら、そんな大金をこんな地方のイベントにくださるなんて、当時の日本はお金持ちだったんだなぁ、なんてしみじみ思いますね。

廣瀬
4,200万・・・(笑)。なんでそんな補助の対象として選ばれたのでしょうか?
笠井さん
やっぱり観光地域振興ということだと思いますね。「ふるさと創生事業」があった頃ですから。今じゃ考えられないですよね。その補助金を使って、衣装や大道具・小道具など、いろんなものを買ったらしいです。だから最初は江戸の町家風景を再現した小屋組みみたいなものも作ったようですけど、残念ながらやっぱりちゃちで、風が吹くと飛んじゃったりして(笑)。回を重ねるごとに、綺麗に建てられなくなっていったりと難点も多くて今はありません。ただ衣装だけは大切に使い続けているので、ほとんどが当時のものです。

廣瀬
歴史が詰まっているわけですね。
笠井さん
神社仏閣のお祭りは何百年と続くものですけど、庶民が考えてこんなしてやっているイベントが長年続いたっていうことは、手前味噌ですけどよく頑張ったなと思っています(笑)。3つの地区の人たちが集まって実行委員会を作り、これまで中身を組み立てて来たと。こんな小さな町で「ゼロから庶民が始めた」というのが、このイベントの特徴かなと思います。それで、代官に付き従う奥方だとか、その娘だとか、農民だとか、いろいろな役どころが揃わない時もあったそうです。ところが今では、いろんなところから参加を希望する人からアプローチが来るようになりました。もちろん地元の企業の関係者の方から参加していただく部分もありますけど、一般の参加者も増えてきて、想定人数が埋まるようになってきています。県外の方・海外からの留学生・新潟国際情報大学の学生さんもいますね。

インタビューに立ち会っていただいていた、西川地域コミュニティ協議会 事務局次長の赤川さん(写真中央)が歴代のポスターを見せてくれました。

廣瀬
県外や留学生の参加もあるんですね。人数は全部で何人くらいですか?
笠井さん
衣装の関係もあって70人くらいですね。今年は定員オーバーでお断りさせていただいた方もいらっしゃいます。特に女性の希望者が多いですね。だから女性に男性役の侍をお願いすることもあります。特定の役柄にこだわる方もいらっしゃれば、とにかく何でもいいという方もいらっしゃっていろいろです。東京から専門のスタッフが来るので、役によってカツラをかぶったり、ドーランを塗るフルメイクをしたりしますから。

廣瀬
距離はどのくらいを練り歩くんですか?
笠井さん
1.4kmくらいですね。金剛寺というお寺から出発して、西川ふれあい公園まで行きます。公園はイベント会場になっていて、出店やステージイベントがありますよ。今回の代官役である演歌歌手の角川博さんも、当日ステージで歌を披露してくださいます。
廣瀬
晴れてくれるといいですけどね。
笠井さん
お天気には随分恵まれているんですけど、今年はどうなるかですよね(笑)。雨に降られてしまうとメインの行列が中止になっちゃうんで。雨天の場合は西川体育センターの中でセレモニーだけ行いますけど、このイベントは地域の人たちが声を掛けあって、行列やイベントを見に来たりして、楽しみにしてくださっているんですね。そういう人たちがいるから運営側も喜んでやれるんです。それ以外にも、口コミで遠いところから来てくださる方もいらっしゃいますから、やっぱり長くやっていると良いことがいろいろ出てくるものなんだなと感じますね。

廣瀬
このイベントを「もっと、こういうものにしたい」という目標はありますか?
笠井さん
う〜ん。目標と言われると難しいんだけど、今は市の補助金をいただいて運営しています。でもどんどん予算がなくなってしまえば、著名人をお呼びすることが辛くなってくるかもしれないですね。その時に、代官役を地域の人からやってもらえるような形にしてでも続けていけたら、というのが願いですね。準備してくださる方々も普段は他のお仕事を持っていらっしゃいますけど、「このイベントに意義を見出して頑張ってくれる」という形でずっと続けていきたいと思います。
廣瀬
最後に読者へメッセージをお願いします。
笠井さん
西川では、「みんなで盛り上げよう」ということでこういうイベントをやっているので、少しでも大勢の方に見に来ていただいて、「将来的に自分も行列に参加してみたい」と思っていただけたら嬉しいです。まつりは見るよりも出る方が楽しいですから、1度体験していただきたいです。

役ごとに本格的な衣装とメイクが体験できるとあって、お年寄りだけでなく若い人からも密かに注目を集めているこのイベント。今年の行列を見学して、来年以降の参加を検討してみては?