旧齋藤家別邸の副館長さんに、秋の庭園ライトアップについて色々聞いてみた。


県内もいよいよ紅葉シーズン到来ですが、注目のスポットはもちろん新潟市内にもありますよ!
今回お邪魔したのは、国の名勝にも指定されている「旧齋藤家別邸」。毎年恒例となっているライトアップが目前に迫っているということで、副館長の風間篤史さんにその魅力を聞いてきました。


廣瀬
はじめに庭園の特徴を教えてください。
風間さん
ご覧の通り斜面になっている庭園なんですけど、これは信濃川が運んで来た土砂でできた砂丘の地形です。新潟には砂丘の列が10個あると言われていて、その一番海側にある砂丘のヘリを利用して造られたのが、ここの庭園です。高低差が約7mあり、その高低差を利用して、阿賀野川上流で採れる「海老ヶ折石(えびがおりいし)」という非常に貴重な石を使った滝もあります。そして池があって、池の周りを散策できる「池泉(ちせん)回遊式」という形式の日本庭園になっています。

廣瀬
確かに庭園の奥側が山みたいですね。
風間さん
それと飛び石の一部に、佐渡の金山で金鉱石を砕くために使用されていた石臼が使われています。
廣瀬
なんで石臼を使っているんですか?
風間さん
お茶の精神だと思うんですけど、簡単に言うと「違う用途のものを使うことがおしゃれ」という考え方があるんです。なので所々に石臼を本来の用途ではない飛び石として配置することが、主人にとってのこだわりのようなものだったのではないでしょうか。この手のことは他の庭園にも例があると聞いています。

廣瀬
へぇ~!植物は具体的にどんなものがあるんですか?
風間さん
新潟の海岸沿いには江戸時代の頃からマツが植えられていますので、その名残のようなものでアカマツやクロマツなどの大きいマツがここにもあります。全部で約1,000本の樹木がありますが、6割がマツをはじめとする常緑樹です。残りの4割が紅葉樹(落葉樹)なわけですけど、その中のさらに170本くらいがモミジ類ですね。なので、地形も植物も石も、新潟の特色をうまく利用して造られたお庭ですね。
廣瀬
入口からも見えましたが、この開放的な眺めが気持ちいいですよね。
風間さん
この建物は、建物とお庭を一体化して考える「庭屋一如(ていおくいちにょ)」という設計コンセプトで造られています。通常の家は南に開口部を造って、日光をお部屋に取り入れるという考え方ですけど、こちらの縁側は北なんですね。なので常に光がお庭の方に当たりますので、建物の中から眺めるのがベストな形と言えます。
廣瀬
紅葉を見に来た人たちの反応はどうですか?
風間さん
具体的な声を聞くことはあまりないんですけど、皆さん必死になって写真を撮られていきますね(笑)。ライトアップの時間は周辺地域の方が多くて、昼間はかなり県外からの観光客さんも来られるようになってきた気がします。最近は大阪からの直通便もできたこともあって、関西から来られる方もいるんですけど、中には「京都の庭園よりもいいですね」と言ってくださる方もいるので、それはすごく嬉しいですね。この庭園を造ったのは、東京 根岸の庭師と伝わっていますので、おそらく全国的にもセンスの高いお庭なんだと思います。

廣瀬
今回は限定の茶席もあるそうですね。
風間さん
そうです。普段からお抹茶は出しているんですけど、基本的に喫茶形式でお点前はしていませんので、今回は初めて若手でお綺麗な茶道家さんにもご協力いただいて、チョコレートを使ったお菓子とお抹茶をセットにしてお出しします。お茶席というと敷居が高いイメージがあると思いますが、少しカジュアルにして皆さんにそのエッセンスを味わっていただけたらなと企画しました。

「ぜひ2階からの眺めもご覧になってください」と、2階にも案内していただきました。

風間さん
1階からはお庭を少し見上げる形でしたが、2階からはパノラマのようになって、同じ庭でも違った見え方をするというのも大きな特徴です。あと、お庭だけでなく手すりや天井、畳縁など、建物の細部にまで施されたデザインも、日本人の洗練された美意識みたいなものが凝縮されているようで、私はカッコイイと思っているんですけどね。まあ、細かいところまで話すと切りがないですが(笑)。

廣瀬
真っ赤に染まったら綺麗でしょうね~。
風間さん
一斉に色づいたら綺麗です。今年は少しばらつきがありますね。それと猛暑の影響で少し色がくすんでいるかなと。夏に雨が降らないと綺麗な色が出ないんですよ。

インタビュー後、せっかくなので風間さんにガイドをしていただきながら庭園内を散策。

風間さん
日本庭園の場合、水は結界の役目もありまして、橋を渡るということは、この世からあの世へ行くということでもあるんです。今で言う「非日常」という解釈ですね。なので「水」は大切な要素です。

庭園の中腹からは市街地のビル群が。平成の建物と大正の建物の対比によって、ここだけ時が止まっているかのような感覚が楽しめるフォトスポットになっています。

庭園の奥にある離れの茶室。残念ながら中に入ることはできませんでしたが、入口に「根上がり松」というタコのような大きなマツがありました。砂丘が風化したことによって、根がここまでむき出しになってしまったそうです!自然の雄大さを感じますね。

茶室の近くには、わざわざ東京にあった伊達藩の大名屋敷から買い、汽車と船を駆使してここまで運んだ、重さが13tもあると言われている大きな岩もありました。

2つ目のフォトスポット。ここから撮影した写真をポスターなどにもよく使っているとのこと。サツキが咲く5月頃の風景もすごく綺麗でオススメだそうです。

池の目の前にある岩も、実はフォトスポットの印。岩の上が特等席となり、庭園を独り占めしている気分を味わえます。日本庭園には、このようなさりげないポイントがわざと造られていることも多いみたいなので、探しながら散策するのも楽しいかもしれません。

風間さん
あ、最後にもう1回建物の中からお庭を見ていただいてもいいですか?先ほどはお庭から近い位置で見ていただきましたけど、庭園の楽しみ方には、あえて引いた位置から眺めるというものもあります。建物が余計な空間を遮る額縁効果によって、さらに景色が引き立つんです。

ということで、もう1回建物に戻り、今度は引いた位置からお庭を見直した写真がこちら。まるでお茶のCMのようなビジュアルです。

最初には気がつかなかった、畳縁の鶴も発見!確かにこんなところにまでこだわるのは、日本人ならではの感覚かもしれません。

都会の喧騒を忘れさせてくれる和みの空間と、日本文化にすっかり魅了されてしまいました。僕のように「旧齋藤家別邸という名前だけは知ってるんだけど」という皆さん、まずは今週末からのライトアップ期間に癒されてみてはいかがでしょうか?

https://shikamo.jp/events/3559

INFORMATION

旧齋藤家別邸 秋の庭園ライトアップと限定茶席
期間 : 11月10日(土)~11月18日(日) ※11月12日(月)は休館日、限定茶席は11月11日(日)から
時間 : 17:30~19:30
会場 : 旧齋藤家別邸
HP : http://saitouke.jp

ACCESS